エンダウメント投資戦略

世界最先端の投資戦略について解説します!

GCIチーフ為替ストラテジスト・岩重 竜宏による「テクニカル分析による為替長期予想(2018年6月18日基準)」

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1.はじめに

今年に入ってからのドル円相場は、1月下旬からの世界的なリスク回避の動きによりメジャーサポートであった107円32銭を突破して、3月には104円56銭まで円高が進行したものの、その
後は一段の円高が進行して100円割れトライに向かうということはなく、5月には111円40銭まで戻すという展開となりました。結果的に、今年前半の円高は一時的なトラップに終わっており、100円割れの懸念は杞憂となりました。

つまり、一時はトランプラリーの賞味期限は一年で切れたかと思われたものの、その後の反発により、ゴルディロックス(適温相場)はまだまだ健在であるとの論調が台頭してきており、現状では概ね楽観論と悲観論が拮抗している状況かと思われます。

こうした状況の中、取り分けドル円相場の予測は難易度を増して来ており、正確なタイミングとその方向性を見立てることは過去三十年間の中でも稀に見る難解さとなっております。

そこでまず、テクニカル分析の見地から、何故こうした状況に至ったのかをプラザ合意にまで遡ることで解き明かし、その後に、現時点で予見される最も可能性の高いシナリオを検証して参りたいと思います。 

 

 

2.超長期の分析から、次回、円の最高値更新は2027年?


4頁の1985年9月のプラザ合意から間もなく33年が経とうとしております。プラザ合意から最初の11年間は大胆な円高が進行して、その間にドルの価値は三分の一になりました。しかしながら、その後の22年間はというと100円を挟んだレンジ相場に移行しており、プラザ合意を鮮明に記憶している世代とそうでない世代とでは、ドル円相場に対するイメージが全く異なるという事情はここに起因しているものと思われます。

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結果、後半の22年間は横這いで推移して来た為に、現在106円99銭に位置する20年移動平均線もここ5年ほどはほぼ水平に推移しておりますが、水平な移動平均線にスポットレートが纏わり付くように推移するという現象は、トレンド即ち、方向感の喪失であります。

また、4頁のオシレーターからも確認されるように、相場のモメンタムは年々減退してきており、直近の5年間は44から48の間に張り付いております。こちらからの解釈も同様に方向感の喪失でありますが、重要なポイントとしては、プラザ合意以降、一度もドル買いシグナルにはなったことが無いという点であります。

したがって、このオシレーターから得られる情報は、シグナルの強弱は兎も角、円高トレンドは引き続き温存されているという事であります。

4頁の年足のチャートが示唆する現時点でのポイントを整理すると次のようになります。アベノミクスにより移動平均線からプラザ合意以降で初めてのゴールデンクロスが観測されたものの、直近は三年連続で陰線となったことで足元は明確な方向性を喪失した。オシレーターからは円高のモメンタム減退が観測されるものの、ドル買いシグナルに反転するには至らず、円高トレンドが温存されている。ダウ理論上は引き続きドル売りシグナルとなっており、特段のプライパターンは観測されない。

ここから導かれる超長期の結論は、プラザ合意から33年の年月を経て円高トレンドは衰退し、アベノミクス以降はトレンド反転の機会を窺うものの実現はしておらず、125円86銭を明確に突破するようなドル上昇の新たな推進力が得られない限りにおいて、来るべき次の方向性は75円32銭のトライであるが、その時期に関して明示的には得られないものの敢えて予測しようとすると、79円75銭を更新するのに16年を要したという直近の前例に鑑みれば、2011年の安値75円32銭を更新するのは2027年という推論は成立する、となります。

また、前回号でも指摘したように、足元の分析がこれほど困難になった直接的な原因はトランプラリーであります。すなわち、トランプラリーが月足のチャート(6頁)のドル売りシグナルを完全に破壊したことで、過去三十年の歴史において極めてユニークな形状となりました。

 

月足のチャートにおいて、20ヶ月移動平均線は現在111円28銭に位置しておりますが、先月も111円40銭を付けたことからも明らかなように、スポットレートは移動平均線に纏わり付くように絡み合っており、明確な方向性を喪失しております。また、オシレーターも現在50に位置しておりますが、こちらも同様に何らシグナルを発する状況にはありません。

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つまり、6頁の二本の青い矢印が指し示すように、トランプラリーの異例な値動きがその後の長期的な調整局面をもたらしたものと推察されます。トランプ氏本人の不確実性とは裏腹に、トランプラリーによる予測の難解さを通じて、相場の安定をもたらしたのはある種の皮肉であります。

実際のところ、過去三十年間、月足ベースのチャートは中長期的なドル円相場の見通しを立てる上で、非常に有益でありました。しかしながら、トランプラリー以降、現在の月足のチャートから得られる相場見通しの情報はほぼ皆無であり、こうした事情が採算レートの不確実性を通じて輸出企業の事業計画立案を困難にしているものと推察されます。

すなわち、どのみち大きくは動かないと達観してしまうのも選択肢ではあるものの、前述したように超長期の方向性として円高リスクが燻ぶり続ける以上、そのタイミングを精緻に予測しようとすればするほど、根拠として利用可能なインディケーターの少なさに愕然とすることになります。

 

3.長期的な安定の為には、107円のホールドが重要


次に、週足のチャート(7頁)でありますが、トランプラリーは嘗てのヘッド・アンド・ショルダー・トップ(S-H-S TOP)のネックラインが位置していた118円台でブロックされて、その後、104円56銭まで押し返されたものの、足元では再び上昇してドル買いシグナルとなっております。

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週足の全体としての評価は、一義的には118円台の上値の重さから円高が優勢となりますが、足元の状況からは再度118円のテストに向かう可能性も出て来ております。
最後に、日足のチャート(8項)でありますが、こちらは嘗てのダブルボトムのネックラインが位置していた107円を明確に割り込んで104円56まで円高が進行したので、本来は、それ以前の107円32銭 ~ 114円73銭のレンジが100円 ~ 107円にシフトダウンする筈でした。

ところが、足元ではあっさりと111円40銭まで回復したことから、現状では下値の堅さが確認されたという評価になっております。つまり、107円割れがトラップであったという事になると、107円 ~ 114円73銭のレンジ相場が復活する可能性も現実味を帯びて来ます。

したがって、今年の年後半、114円73銭のトライに向かう可能性は十分にあるという事になりますが、一気に118円66銭のトライにも向かうかというと、この点に関しては難易度が飛躍的に高まることから、118円66銭の突破は現実的ではないと考えられます。仮に、118円66銭を突破すると125円86銭を目指す一段のドル買いシグナルが発動されるということになりますが、その為には何らかの新たなドル上昇の推進力が必要となるからであります。

また、前述の20年移動平均線が106円99銭に位置していることからも明らかなように、107円というのは複数の重要なポイントが混在する特別な水準となっており、ドル円相場を安定的に110円程度の水準に封じ込める為には、死守すべき重要な水準であります。

余談ではありますが、107円割れを目前に控えた今年の2月10日、新聞で黒田総裁の続投をリークしたのは、将棋に例えると、官邸サイドの好手であったと筆者は考えている次第です。

 

4.まとめ

 

私見によれば、ドル円相場は107円 ~ 114円73銭のレンジ相場に回帰したと考えられ、年後半は一時的に114円73銭に迫る局面も予想されます。しかしながら、118円66銭のトライに向かうような一段のドル上昇はテールリスクと考えられ、実質的には115円を超えるのは困難と予想します。また、100円割れを目指す本格的な円高局面も今年中に発生する可能性はかなり低くなっておりますが、104円56銭を割り込む場合には前述のシナリオは、一旦全て破棄されます。

                                    以上

 

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