エンダウメント投資戦略

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チーフ為替ストラテジスト・岩重 竜宏による「テクニカル分析による為替長期予想(2017年10月末基準)」

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1.はじめに

過去一年間のドル円相場のレンジは、107円32銭 ~ 118円66銭という僅か11円の狭い値幅に収まりました。ニクソンショック以降、46年のドル円相場の歴史において、こうした値幅の狭さは特別に珍しい現象という訳ではありませんが、それがトランプラリーに起因していたという点は、テクニカル分析の見地からも明白かと思われます。

 

すなわち、前回号(2017年7月10日号)で指摘したように、トランプラリーによって月足のチャート(6頁)は過去三十年の歴史において、極めてユニークな形状となりました。そして、こうした事実が明確なトレンドの喪失をもたらし、今後の見通しを難解なものにしている所以であります。

 

達観して言うならば、99円 00銭 ~ 125円86銭のレンジ内に収まっている間は、超長期的にはニュートラルで何れか突破した方が次のトレンドという事になりますが、トランプラリーによる混乱によって、さらにその内側のレンジ、つまり前述の107円32銭 ~ 118円66銭での調整を余儀なくされている、というのが現状であります。

 

通常、こうした大型の調整局面を形成した場合、次の超長期的なトレンドの方向性とその切り替わりのタイミングをピンポイントで予測することは非常に難易度が高い訳でありますが、以下、テクニカル分析の見地から最も可能性の高いシナリオを検証して参りましょう。

 

2.長期の分析からは、脆弱なドル買いシグナル

それではまず、年足のチャート(4頁)から現在の状況を検証して参ります。
年足のチャート(4頁)から読み取れることは、ダウ理論上は147円64銭を突破しない限り、戦後の円高トレンドは継続するということ。ただし、アベノミクス以降、初めて20年移動平均線ゴールデンクロスしたことから上値トライに向かっております。しかしながら、オシレーターは現在45に位置しており、依然として50の突破を果たせていないことから、この点ではドル買いシグナルとはなっておりません。

 

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また現在、20年移動平均線は107円21銭に位置しておりますが、今年のドルの安値が107円32銭で辛うじてホールドされたことから、これよりも上での定着に向けて作用しているとの解釈も可能な状況にはあります。

 

以上の点から、年足のチャートが示唆するのは脆弱なドル買いシグナルという事かと思われます。すなわち、それぞれのインディケーターから発せられるシグナル自体はミックスしているものの、足元ではゴールデンクロスを最も重視すべきであります。しかしながら、オシレーターによるドル買いシグナルが点火されない状況を踏まえると、147円64銭のトライは遥かにほど遠く、また125円86銭のトライすら実質的にはおぼつかないのが実態です。

 

つまり、147円64銭へはトライにすら向かえないという前提に立てば、ダウ理論上の円高トレンドは揺るぎないという事になるので、10年後といった超長期の見通しとしては再び70円台の円高方向に向かう蓋然性が高いという事になります。ただし、アベノミクス以降のドルの高値である125円86銭を更新する場合には状況が一変することになります。すなわち、147円64銭を目指す一段のドル買いシグナルが発動されることになるからです。

 

次に、月足のチャート(6頁)でありますが、過去三十年の歴史の中で、現在は極めてユニークな形状をしております。すなわち、過去三十年間の月足のチャート(6頁)でデッドクロスは、赤丸で囲った通り過去四回あり、今回で五回目となりますが、過去の四回と今回では著しくその形状が異なっていることが分かります。

 

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つまり、青の矢印で示した通り、今回のみ20ヶ月移動平均線を明確に切り返しており、また、今回のみオシレーターも50を明確に突破して、いずれもドル買いシグナルへと転じております。これはトランプラリーが月足のドル売りシグナルを完全に破壊したことを意味します。

 

したがって、トランプラリーが無かりせば、今年度は100円割れ、すなわち、二桁へ向けた円高がメインシナリオになる筈でした。しかし、現状では100円割れの円高はかなりのテールリスクであり、確率論的にはほぼ起こらないと分類される領域かと思われます。

 

さは然りながら、このゴールデンクロスによるドル買いシグナルが強いかというと、20ヶ月移動平均線は下降を継続しており、グランビルの法則に抵触することから脆弱であるという点が悩ましいところであります。

 

ただし、現在、20ヶ月移動平均線は109円78銭に位置しておりますが、漸く水平になりつつあることから、足元の状況としては上値トライに向かう兆候も出て来ており、今後数か月の趨勢次第では125円86銭を目指す可能性もゼロとは言い切れません。しかしながら、そもそも今回のパターンは、一旦完成したドル売りシグナルをトランプラリーでひっくり返したという特異な経緯を考慮すると、125円86銭の突破も統計学上かなり稀なケースとなります。

 

したがって、125円86銭の突破をメインシナリオに据えることは出来ませんが、これが実現するようであれば、その場合は「故に、歴史的な大転換」とも言えるかも知れません。当然、その際はファンダメンタルズにおいても歴史的な地殻変動を伴っているものと推察されます。

3.短期的には上値トライを示唆

次に、週足のチャート(7頁)は、トランプラリーで嘗てのヘッド・アンド・ショルダー・トップ(S-H-S TOP)のネックラインが位置していた118円台でブロックされて、一旦は107円32銭まで跳ね返されておりますが、足元は再びドル買いシグナルとなっており、現在、118円近辺に位置するネックラインの明確な切り返しを再度窺う展開が予想されます。

 

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前述のネックラインを突破し、さらに、トランプラリー以降のドルの高値である118円66銭をも明確に突破することは容易ではありませんが、突破に成功した場合でもより重要なのは、これよりも上で定着するか、或いは、突破がストップロスをヒットする為だけの一過性の値動きか、という点であります。


一過性ではなく、これよりも上で定着した場合には、いよいよ125円86銭を目指す一段のドル買いシグナルが発動されますが、そこに至るまでの間にも121円69銭(マイナス金利導入直後の高値)や123円75銭(チャイナショック後の高値)等、かなりタフなレジスタンスが待ち受けており、125円86銭のトライは一筋縄では行きそうにありません。


また、日足のチャート(8頁)は、9月のドル下落局面で嘗てのダブルボトムのネックラインが位置していた107円50銭を一時的に割り込んだものの、僅か一日限りの一過性の動きに終わっております。結果的に、前述の20年移動平均線が位置する107円21銭から107円50銭に掛けて、強いサポートが存在することを証明した形になっております。


したがって、次回の円高局面でも107円台は強いサポートとして意識されることになります。また、仮にこれを明確に割り込むとその後の数か月間は、100円 ~ 107円のレンジを形成する可能性が高いと予想されます。

 

以上を総合的に考慮すると、最も可能性が高いシナリオとして考えられるのは、当面は118円66銭の上値トライに向かう展開が予想されること。そして、仮に118円66銭の突破に一時的に成功しても120円台での滞空時間は極めて短い可能性が高いという事であります。そして、その後は20ヶ月移動平均線が位置する109円78銭に向けてドルが下落する可能性が高く、達観して言うならば、結果的にほとんどの期間は109円78銭 ~ 118円66銭のレンジ内で費やされて、レンジの外に留まるのは極めて短期間という事かと思われます。

 

4.まとめ
私見によれば、ドル円相場は5割程度の確率で向こう半年以上も109円78銭 ~ 118円66銭を中心とするレンジ内でのボックス相場になると予想します。また、118円66銭を本格的に突破するような円安進行の可能性も3割程度は想定されますが、この場合でも120円に滞空するのは一時的で極めて短期間と予想されます。

 

一方で、109円78銭を突破するような円高の可能性も2割程度は想定されますが、今年度中に100円を割り込む可能性は極めて低いテールリスクと考えられます。

                                                                                                                                 以上

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