日本でも米国でも、新ファンドを販売する際にはストーリーが必要です。例えば、最近流行の“マルチマネージャー・オルタナティブ・ファンド”(Alternative Multi-manager Mutual funds)を売り出す際の口上はこのような感じです。
“手前どもは様々な戦略、例えば、株式ロング/ショート、相対価値戦略、マクロ戦略などを持つトップクラスのヘッジファンドマネージャーを選んで日次流動性、低コストかつ情報開示を確保した投資信託を組成することが可能です。”
ご存知の通り、投資信託(米国ではmutual fund)は基準価額が毎営業日ごとに計算され、その基準価額に基づいて買い付け/解約が行われます。
したがって、投資信託に組入れられる資産(=株式、債券、オルタナティブ投資など)は、原則として毎日売買可能でその資産価格が毎日産出されるものでなければなりません。
例えば、投資信託で土地を買って資産として組入れたとしても、毎日その土地の価格が算出されない限り、投資信託には組入れられません。
通常、土地の売買は相対取引で、当事者以外は価格は分からないですね。こうした流動性に劣る資産は投資信託には組入れられないのです。
一方、オルタナティブ投資の利点の一つに、これとは逆の“非流動性”が上げられます。つまり、足元の資産価格は分からないものの、長期的に運用していれば流動性に勝る資産よりも高いリターンを上げられる可能性があるということです。
例えば、マイクロソフトもアップルも、ヤフーもグーグルもフェイスブックもかつてはすべて非上場企業でした。
非上場株式ですから、証券取引所で取引されるわけではありません。株価は毎日計算されませんし、売買するのも簡単では有りません。
ただこうした非上場株投資家は、その”比流動性”に目をつむり将来性を見抜いた上で資金を拠出して、上場後投資額の何十倍ものリターンを獲得できたわけです。
そういう観点では、AMMFは両手で戦っているボクサーではなく、片手で戦っているボクサー、つまり非流動性や非透明性によるメリットを犠牲にして運用せざるを得ないのです。
ただし、米国においてはDC(=確定拠出年金)の拡大とともに、2012年以降AMMFの純資産総額は増えてきています。
2016年は、そうしたAMMFがパフォーマンスやコストの観点から正しく評価される元年になるかもしれません。
米国のそれぞれのAMMFの詳細については、こちらをクリックしてみてください。
http://money.usnews.com/funds/mutual-funds/rankings/multialternative?sort=category_rank