エンダウメント投資戦略

世界最先端の投資戦略について解説します!

GCIアセット・マネジメント  チーフFXストラテジスト・岩重竜宏による「テクニカル分析による長期為替予想」をお届けします。

2016年 12月末 100円59銭

2017年 6月末 94円63銭

 

1.はじめに


今から丁度一年前の2015年6月5日にドル円相場は、2002年以来の13年振りの円安となる125円86銭を記録しました。そして、それから僅か5日後の6月10日に、黒田日銀総裁衆議院予算委員会で実質実効レートに関する発言をしたことで、大きく潮目は変わり実質的に円安は打ち止めとなりました。

 

それ以前に当レポートで指摘してきたポイントは次の三点でした。すなわち、第一に1998年のドルの高値147円64銭を突破しない限り、360円から75円まで続いた戦後の円高トレンドは完結しないということ。第二にアベノミクス以降のドル上昇トレンドは戦後最強で、充分に147円64銭をトライする可能性はあるということ。第三に為替相場には「極端から極端に振れる」という習性があり、ドルの上値トライに失敗したことが判明すると、日本のような経常黒字国の通貨は、あっという間に極端なドル安円高に戻ってしまうということ。

 

要するに、円高に戻すことは、いとも容易く出来てしまうので、国益を考えるならば出来るだけ147円に近いところまで円安を引っ張るべきだということであります。
結果的に、節目となる147円よりも20円以上も手前で拙速にキャップしてしまった為に、その二ヶ月後に起こるチャイナショックに対する耐性は失われました。さらに、その後の米国の利上げ見通しが大幅に後退したことから僅か一年で20円も円高となり、足元の円高の勢いも収まりそうにありません。

 

一見すると、現在の円高は黒田総裁一人に責任がありそうですが、筆者はそうした評価は適切ではないと考えております。すなわち、実質実効レート発言が飛び出す半年以上も前から、経済界の方からは「これ以上の円安は好ましくない」という趣旨の発言が頻発しておりました。

 

こうした経済界からの反応に違和感を覚えた市場参加者は少なくなかったのではないでしょうか。当然、内閣もこうした経済界からの円安への反発には戸惑いを感じたかと思われますが、自民党としても、そもそも高齢者などに評判の悪い円安を財界からの反発を押してまで推進する意味は失われたかと思われます。また、日銀総裁の任命権も内閣にあることを考慮すると黒田総裁の政策にも大きく影響したものと推測されます。

 

それでは、何故、経済界は円安に反発したのかという点でありますが、それは多くの大手輸出企業が為替に関しては、既にリスクフリーになっていたからだと思われます。
実は、多くの国民は気付いておられないかも知れませんが、円高と派遣社員の問題は密接にリンクしていると筆者は考えております。

 

すなわち、ニクソンショック以降、度重なる円高に輸出企業が苦しめられたのは事実であります。そして、民主党政権時代に75円という超円高が長期間放置されたことで、疲弊した多くの大手輸出企業が出した結論は、為替リスクを会社固有のリスクから切り離して、派遣社員個人の雇用リスクへと転換するということであったかと思われます。
結果的に、現在の大手輸出企業の円高に対する耐性は、以前と比較すると格段に強まったと考えられます。しかしながら、それはまた新たな問題を生じさせました。すなわち、それは為替リスクが日本国内から消えてなくなったという意味ではないからであります。

 

つまり、為替リスクを転換された派遣社員はわが国の同胞であります。そして、彼らと彼らの家族が抱く漠然とした将来不安が足元の消費低迷を通じて、マクロ経済に悪い影響を及ぼしているものと推測されます。したがって、量的緩和を拡大したところで、インフレが容易に進捗しないのも当然と言えるかも知れません。すなわち、通貨として円の価値が容易に下がり辛いというパスを新たに構築した要因と考えられます。

 

筆者個人としては、円安に反発した大手企業の幹部の皆様が、次回の円高局面で会社の業績不振の原因を為替相場に帰するのは適切でないと考える次第です。

 

さて、大勢としては円高方向で勝負は決しておりますが、一気に75円に突き進むという訳でもないので、今後の展開をテクニカル分析の視点から検証いたします。

 

2.極めて順調な円高トレンドの初期段階

戦後の円高トレンドを反転させることに失敗したということは明白でも、すわ75円かというと、それ程単純でもありません。アベノミクスによって三年間のドル上昇トレンドを形成されたということを踏まえると、大雑把なイメージとしては、振り出しの75円に戻るのも三年は掛かるという事になります。

 

それでは少なくとも三年は掛かるという大雑把な見通しの下、どのようなパスを辿って75円に到達するかとういうことですが、実は、125円86銭を付けてから既に一年が経過しておりますので、最短で行くとあと二年で75円に到達しても不自然とは言えないということになります。

 

まず、年足のチャート(4頁)から検証しますが、アベノミクスによって2014年に戦後初めて20年移動平均線とのゴールデンクロスを完成しましたが、年初からの円高によって再びデッドクロスしており、超長期のドル買いシグナルは僅か二年間で完結しております。さらに、ドルの高値が125円までで天井をつけたことからRSIでは50の突破すら果たせておらず、アベノミクスによってもたらされたドル買いシグナルは不完全なもののまま完結しております。

 


年足ベースでいうと、今後の注目点としては20年移動平均線が位置する107円36銭よりも下で定着するか、否かが、ポイントでありますが、下で定着するといよいよ本格的な円高トレンドに再突入という判断になります。

 

次に月足のチャート(6頁)でありますが、既に完璧なドル売りシグナルとして完成しております。すなわち、118円03銭に位置する20ヶ月移動平均線は下降に転じており、また、RSIも50を割り込んで数ヶ月が経過しており、双方のインディケーターから読み取れるのは長期的なドル売りシグナルであります。

 

そして、週足のチャートでありますが、これまた完璧なドル売りシグナルを形成しております。すなわち、マイナス金利導入の翌週にはヘッド・アンド・ショルダー(S-H-S TOP)を完成しておりますが、既にメジャーリング・オブジェクティブであった106円50銭に到達しており、小刻みなコレクションとしてのドル上昇局面はあったものの、本格的なドル反発局面に転じる兆候は今のところ見当たりません。

 

以上を総合的に判断すると、現在は、極めて順調な円高トレンドの初期段階に位置していると考えられます。

 

3.半年以内に半値戻しの100円59銭へ

次に、値幅のターゲットでありますが、前述の通りヘッド・アンド・ショルダー(S-H-S TOP)のオブジェクティブを達成してもまとまったコレクションへ移行する兆候がないということは、現在の円高のターゲットは次の段階に進んだと判断するのが妥当であります。

 

すなわち、現在は75円32銭と125円86銭の半値戻しにあたる100円59銭を目指していると考えられます。なお、手前では105円55銭と111円45銭の値幅5円90銭のフィボナッチ比率分の下押しにあたる103円30銭や101円90銭なども短期的なサポートとして存在しておりますが、向こう半年以内には100円59銭に到達すると予想されます。

 

さらに、向こう二年以内に75円までの円高も想定されるという点を考慮すると、向こう一年以内に75円32銭と125円86銭の61.8%戻しにあたる94円63銭へ到達する可能性も充分に予想されます。

 

4.まとめ
私見によれば、ドル円相場は5円程度の小幅なコレクションとしての円安局面を伴いつつも、向こう半年以内に100円59銭に到達し、さらに、一年後には94円63銭に到達するという円高シナリオを8割程度の確率で支持します。

 

なお、現在、20ヶ月移動平均線は118円03銭に位置しておりますが、コレクションとしての円安局面が一時的なものに止まらず、118円03銭をも突破する場合には、前述のシナリオは全て破棄されます。

                                     以上

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